苦しみを乗り越える秘訣

IMG_20210321_112148.jpg5年前、熊本で二日続けて大地震がありました。温泉宿を経営していたある人は、建物が大きな被害を受けて再開の目処が立たず、途方に暮れていました。それから二か月後、今度は集中豪雨で山が崩れ、温泉と宿が泥に埋もれてしまいました。もう何もかも失い、借金だけが残りました。放心状態で、一時は死を考える日々が続きました。ただ敷地の隅に、忘れ去られたように一坪ほどの源泉だけが残っていました。そこに浸かりながら、大切なことに気付かされました。

「すべてを失ったと思っていたが、足元に自然の恵みが残っているじゃないか!」足元から、昔と変わらず温泉が湧いていました。自然の恵みです。それを勝手に利用して、儲けさせてもらっていたのです。儲けたお金で造った宿や食事処は失しないました。「すべて」を失ったと勘違いしていました。温泉宿を始めた頃、源泉以外何も無かったのです。一番大切なものは残っていました。温泉宿を始めた先祖を思いました。原野に温泉を見つけ、その恵みを人々に役立ててもらおうと、小屋を建てたのが始まりです。いつの間にか、お金儲けのために自分が利用することだけを考えていたのです。

そう気付くと、後は早かったです。小さな小屋を造り、地震と豪雨で疲れ果てた地元の人々を招いて、無料で提供しました。みんな元気が出ました。再建への力が湧いて来ました。温泉とは本来そういう恵みだったのです。これで弾みがついて、うまく回り始めました。失ったものばかりを考え、それを取り戻すことができないので、絶望するのです。失ってないものに気付いていなのです。それこそが一番大切です。そこから出発すればいいのです。

パウロは、「神は、乗り越えられる試練しか与えない」(1ゴリント10.13)と教えています。あなたが同じような状況に陥った時、苦しみを乗り越えることが出来るでしょうか。ただ祈るだけでは、乗り越えられません。過去の財産や地位に執着しているなら、いつまで経っても希望は訪れません。失ったものばかり考えても前に進めません。今できること、目の前にある恵みに気付く必要があります。そのために一度、過去の自分と決別しなければなりません。回心です。反省を意味する改心ではなく、生き方を変える回心です。自己を手放して神と向き合う時、希望の光が心に差し込みます。他者のために生きる決心があれば、必ず試練を乗り越えられます。■*2021/03/18 四旬節黙想会説教(小寺神父)
絵の俳句…石畳 足音刻んで 夏来る (さ)

この記事へのコメント

Asakinpas
2021年03月23日 20:15
「神は、乗り越えられる試練しか与えない」(1ゴリント10.13).
失ったものばかり考えても前に進めません。今できること、目の前にある恵みに気付く必要があります。そのために一度、過去の自分と決別しなければなりません。回心です。という言葉は本日の私にたいそう刺さります。ありがとうございました。神に感謝!

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